3. コーヒー豆の違いの見分け方
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※この記事は「カスタムブレンドキット scene」をご購入し、ブレンド作りをする方に向けた記事です。
コーヒー豆の情報から分かること
コーヒー豆の情報を見て、どのようなコーヒーなのか想像できますか?
SCENE FACTORY COFFEE ROASTERSが扱っている全ての豆は、スペシャルティコーヒーという高品質な豆です。それは、世界流通量の5%程度しか流通していません。また、トレーサビリティ(追跡可能性)が重視されているため、生産者と生産方法の情報が公開されています。
今回は、そんなコーヒー豆の情報の読み取り方を一部説明します。
コーヒーの焙煎度
まずは、基本中の基本「焙煎度」について。
焙煎度とは、どれだけコーヒー豆に熱を通したか、という指標です。よくコーヒーの味は「苦味」や「酸味」などとざっくり言われたりします。これらの強さは、焙煎度に強く依存します。
焙煎が深ければ苦くなり、焙煎が浅ければ爽やかになります。生産国によっても違いはありますが、苦味や酸味の強さは、豆の個性よりも焙煎度によることがほとんどです。
3つの焙煎度
焙煎度は、大きく分けて3つ。浅煎、中煎、深煎です。
まずは気になる店で浅煎、中煎、深煎を1種類ずつ試してみるといいかもしれません。また、得意な焙煎度が店によって異なることもあります。
焙煎度の表記
焙煎度の表記は、店ごとに様々です。例えば、SCENE FACTORY COFFEE ROASTERSでは、2021年2月現在5段階で焙煎し、下記のように表記しています。
- 中浅煎(ミディアムロースト)
- 中煎(ハイロースト)
- 中深煎(シティロースト)
- 深煎(フルシティロースト)
- 極深煎(フレンチロースト)
深く煎るほど豆が黒くなり、酸味が減って、苦味が増していきます。豆の味をみるとき、まずは、その豆の焙煎度を確認すると良いですよ。
ちなみにSCENE FACTORY COFFEE ROASTERSでは、深煎でもコーヒー豆本来の個性である酸味を活かし、苦味が出すぎない焙煎を心がけています。
私たちに焙煎方法のこだわりがあるように、焙煎所によって焙煎の考え方が違い、同じ銘柄で同じような色・見た目の豆でも焙煎の仕方によって風味が異なります。奥が深いですよね。
コーヒーの生産処理方法
コーヒー豆の正体は、コーヒーノキという植物の果実の中にある種です。
「生産処理」とは、コーヒーノキの果実から種を取り出し、不要なものを取り除き乾燥させコーヒーの生豆まで仕上げるプロセスのこと。このプロセスにも種類があり、それによってコーヒーの風味が変わってきます。
以下に、代表的なものを4つ紹介します。
ウォッシュド
水洗処理方式と呼ばれます。果肉から種を取り出し、発酵炉に入れた後に水で洗い流し、種の周りにある粘液質(ミューシレージ)を除去し、豆を乾燥させてパーチメントと呼ばれる硬い殻を脱穀します。
欠点豆が出にくく、クリアな風味にしあがることが多いです。クリーンな酸味は上質な味わいですよ。設備や大量の水を使うため、生産に比較的お金のかかる方法です。
ナチュラル
非水洗処理方式と呼ばれます。ウォッシュドは種の状態にしたあと乾燥させていたのに対し、ナチュラルの場合は実のまま乾燥させます。果肉の風味が豆に付いているため、個性的でフルーティなコーヒーになります。
乾燥させるのに時間がかかるため、カビや虫食いなどが起こりやす炒め、丁寧なピッキング(欠点豆を取り除く作業)が欠かせません。
豆の名前には「ナチュラル」と表記されることが多いです。
パルプドナチュラル
パルプドナチュラルは、ウォッシュドとナチュラルの良いとこどり。
果肉を除去する点はウォッシュドと同じですが、粘液質(ミューシレージ)を残したまま、乾燥処理に入ります。果肉の風味が程々に豆に移り、個性的な味わいになります。また、酸味もクリーンになるため、本当に良いとこ取りという感じ。
豆の名前に「PN」や「ハニー」などと表記されることもあります。
スマトラ式
インドネシアのスマトラ島で行われる独自の精製方法です。
豆を2回乾燥させるのが特徴。まずは、外殻(パーチメント)がついた状態で、豆を半乾きにさせます。そのあと脱穀し、生豆の状態で、もう一度乾燥させます。
スマトラ式は、雨がよく降り、長時間屋外で乾燥させられないことから考えられた方法です。
弱点は、生乾き状態で置いておく期間があったり、殻に守られていない状態で乾燥させるため、カビなどの欠点豆が出やすいこと。
しかし、大地を感じる独特な風味(業界では「アーシー」と言います)は、日本では根強いファンが多く、近年ではヨーロッパ諸国でも再評価されているようです。
豆の名前にスマトラ式と表記されることはあまりありませんが、インドネシアのマンデリンと呼ばれるものは、ほぼこの生産処理方法です。
国や地域によって異なる「得意な生産処理方法」
国や地域によって得意な生産処理方法が異なり、それによってその国の豆の個性が一般的であったりします。
例えば、ブラジルはナチュラルやパルプドナチュラルが多いため、バランスがとれている中にも香りがある。コロンビアはウォッシュドが多いため、クリーンでマイルドな風味が多い。
sceneの豆は6種類、色々な生産処理方法のものがあります。ぜひ、意識して飲み比べてみてくださいね。
コーヒーの産地について
産地ごとにコーヒーの風味に特徴がある理由は、国によって得意な生産処理方法が違ったり、生育環境が違ったり、コーヒーの品種が違ったり、はたまた国の方針でこだわったコーヒーを作っていたりするからです。
大きくは、南アフリカ、中米、南米、アジア他と分かれます。国によっても違いはありますが、以下のような印象です。
- 南アフリカ(エチオピア、ケニア、ルワンダなど):野性的で個性が強い
- 中米(グアテマラ、コスタリカ、パナマなど):上質な酸味
- 南米(ブラジル、コロンビアなど):バランスのとれた優等生
- アジア他(インドネシア、インドなど):独自路線の個性派
実際に世界地図を見ながら飲みくらべてみると、近所の国でも風味が違ったりして、違いが楽しめますよ。また、色々飲み比べていると、少しずつキャラクターが見えてきます。
コーヒーの名前から豆由来の情報を読む
これまで紹介した焙煎度以外の情報は、焙煎する前の「それぞれの豆本来の個性の指標」です。そんな豆本来の個性を知るためのヒントが、コーヒーの名前には隠されています。
ブラジル シティオトマジーニ レッドカトゥアイ PN の場合
スペシャルティコーヒーの豆には、大抵長ったらしい名前がついています。
例えば「ブラジル シティオトマジーニ レッドカトゥアイ PN」。
この名前には、4つの情報が入っています。
- ブラジル:国名
- シティオトマジーニ:農園の名前
- レッドカトゥアイ:豆の品種名
- PN:パルプドナチュラルのイニシャル。生産処理方法を示します。
ケニア マサイ AA の場合
次に「ケニア マサイ AA」
- ケニア:国名
- マサイ:ブランド名
- AA:ケニア国内での豆のランク。ケニアでは豆の粒の大きさでランクが決まります。
「ケニア マサイ AA」の名前に情報が少ない理由
名前の付け方に決まりはありません。ですが、わざわざ名前に入れるのには理由があります。
例えば、「ケニア マサイ AA」の情報が少ない理由は、
- ケニアの小規模農家から集めてよりすぐったものを「マサイ」というブランドにしたため、農園名が入れられない。
- 品種も、色々なものを混ぜているので、名前に入れられない。
- ケニアの生産処理方法は、一般的であるウォッシュドを採用している。そのため、ケニア内の豆でウォッシュドと入れても差別化にならない。
という背景があるためなのです。
コーヒーの名前には色々な単語が入ってきます。様々な理由と背景をそこに読むことができます。
「カスタムブレンドキット scene」の豆の特徴
さて、ここまでコーヒー豆の特徴の見分け方を説明しました。
最後に、「カスタムブレンドキットscene」に同封しているSCENE FACTORY COFFEE ROASTERSからのコメントを記載します。ブレンドの参考にしてください。
もちろん、正解というわけではありません。先入観なしでテイスティングしたい方は、ここから先はまだ読まないでくださいね!
それでは、ブレンドづくりを引き続きお楽しみください!
カスタムブレンドキットsceneの豆のコメント
ブラジル ファゼンダ カクェンジ パルプドナチュラル
柑橘系の明るい酸味が主張しすぎず、とても良いバランスです。ブレンドにもよく使われる使いやすい豆です。
グアテマラ エスペランサ ラ・ベガ
とてもバランスがよく、複雑で奥行きのある風味が特徴的です。口当たりのまったりさやコクがあります。
エチオピア イルガチェフェ G1 セラム ナチュラル
フルーティな香りで、果実感が強い豆です。明るい酸味がありますが、主張の強い豆でもあります。
パナマラ・エスメラルダ ダイヤモンドマウンテン
明るい酸味で、バランスのとれた豆です。すっきりした風味で、主張もそこまで強くなく使いやすい豆です。
ケニア キウニュウ AA
芳醇な風味で、味の濃さと複雑さ、甘みが特徴的です。味に深みがほしいときに足したりします。
インドネシア マンデリン ポルン アルフィナー
マンデリンらしい独特な風味なので、ベースにもアクセントにも使えます。個性をもたせたいときに使いやすいです。