その音を選ぶ理由 | コーヒーのある音 vol.2
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なにかを「つくる」ということは、とても尊いことだと思う。
音楽を聴くとき、絵を見るとき、作り手のことを想像する。
なぜ、この曲はこういう構成になっているのだろう。
なぜ、この音をこのタイミングで入れたのだろう。
なぜ、このメロディに、この言葉をのせたのだろう。
シンプルに作品そのものを感じることはもちろん楽しい。
でも僕は、その奥にある制作者の意図や背景がとても気になる。
もしかしたら、作った本人は「大した意図なんてない」と言うかもしれない。
それでも人間が作ったものである以上、そこには必ず選んだ理由が何かあるはず。
その曲を書いていた時期に、素敵な出会いがあったかもしれない。
反対に、とてもしんどい時間を過ごしていたのかもしれない。
生活の中でふと浮かんだ言葉、忘れられない景色、誰にも言えなかった感情。
そんなものが音や色や言葉になっているのかもしれない。
そういうことを想像しながら作品に触れると、ただ聴く、ただ見るだけではない楽しさが生まれる。

ところで、最近はAIの活躍が凄まじい。
そんなAIだって理由をもって作品を作ることはできる。
「このメロディは90年代っぽくてこの空間に合う」「このコード進行は切なさを感じさせる」「あえて音を汚すことでアナログ感や懐かしさを生み出す」
そんなふうに、分析や組み合わせによって、魅力的なものを短時間で作ってみせる。
本当に便利だし、僕も仕事やプライベートでもかなり使っている。
ただ、本質的な「なぜ、そうしたのか?」という問いに対する答えは、やはり人間からしか出てこないのではないか。
なぜ、この色を使ったのか。
なぜ、この構図にしたのか。
なぜ、その言葉を選んだのか。
そこには、その人が生きてきた時間や、見てきた景色、抱えている感情がにじむ。
それは、必ずしもセオリーではない。
うまく説明できないとしても、作品には自然とそういうものが現れる。
スマホの画面やスピーカーを通して受け取っているだけでは、僕たちは本当のことを知ることができない。
あなたが好きなバンドやアーティスト、アイドル。
顔出しをしていないアーティストも最近は増えた。
直接会ったことがないのであれば、その存在を完全に確かめることはできない。
当たり前に人間が歌っている、演奏していると思っているものが、もしかしたらAIによって作られているかもしれない。
これからは、そういうことが珍しくなくなっていくのは容易に想像ができる。

だからこそ、僕は何かをつくることも続けていきたい。
なんだか、それが人間たることを証明するような気さえしている。
「何かをつくる」━━音楽だってそうだし、コーヒーの仕事だってそう。コーヒーの仕事は、手触り感があってすごく好き。
それから、他の人が作ったものにも、できるだけ生で触れに行きたい。
ライブでも、展示でも、目の前で淹れてくれるコーヒーでも良い。
大げさに聞こえるかもしれないけれど、そこにある魂のようなものに触れたいと思う。
画面越しでは、気付かないことがある。
だから、五感全てで感じられるところまで、触れに行く。
この記事だって、本当に人間が書いているのか、触れに来た人にしか分からない。
writing:代表 篠田